四十路を越えて「かわいい?」と聞きまくる女/59番目のマリアージュ(アルテイシア)

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ある朝、夫の部屋で呆然と立ち尽くした

by Hernan Piñera

by Hernan Piñera

付き合いたてのカップルが「この人、ほんとに私のこと好きなのかな?」と不安を抱くのは、甘酸っぱい恋愛あるあるだ。

 

一方、うちの夫は「こんなうまい話があるわけない、デート商法じゃないか?」と疑念を抱いていたらしい。

私の部屋を訪れた時も、こちらは「いつ手を出してくるのかしら?」と思っていたが、あちらは「いつラッセンの絵が出てくるのかしら?」と身構えていたそうだ。

 

その後、詐欺の疑いは晴れて、今度は私が不安を抱く番になった。「彼の母親は、結婚を認めてくれるだろうか?」。

 

「親なんて関係ないぜ、ヒャッハー!!」とモヒカン頭で舌を出しながら言えればいいが、私は両親が離婚していることや、親と絶縁関係にあることで、彼氏の親に結婚を反対されたことが何度かあった。

ちゃんと自立して働いて納税していても、自分にはどうしようもない親の問題で反対されるのは、かなりキツかった。

 

その不安を夫に話したところ、彼は「大丈夫」としっかりした声で答えた。

「あの母親は学歴に弱いから」

 

事実、私の学歴を伝えたとたん、義母は「ヒャッハー!」とモヒカン頭で舌を出す勢いで舞い上がり、大歓迎モードになったらしい。我が生涯で学歴がもっとも役に立った瞬間だった。

 

結婚後も、義母は「うちのお嫁さん、○○大卒なのよ」と事あるごとに自慢して、ある時は「ほんまはもっと上の大学を狙えたんやけど」と付け加えるのを聞き「盛ってる…!」と衝撃を受けた。

 

実の親が見栄っぱりなのは許しがたいが、他人の親だと「まあいっか、おばあさんだし」と許せるもの。

 

70代後半の義母は、世間体をとても気にする。

夫の部屋にあるトカゲのケースを眺めては「こんなもん飼ってるなんて、ご近所さんにバレたらみっともない」とため息をつく。

「私は皇太子みたいな息子に育てたかったのに、なんであんな変態に育ったんやろ」と嘆く義母に「お母さん、彼は変態じゃなく変人ですよ」と訂正する私。

 

そんな数年前のある朝、私は夫の部屋で呆然と立ち尽くした。

「な、なんでラーメンマンがケースの中に…?!!!」

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※愛猫のラーメンマン

当時まだ子猫だったラーメンマンがケースの中にいて、トカゲの姿はなかった。

 

「寝ている間にザ・フライ的な現象が…?」と戦慄したが(80年代ホラー映画を観て育った世代)、わが家にそんな最先端の物質転送装置はないし、トカゲは体長約20センチで子猫が丸飲みできるサイズでもない。

 

「トカゲに興味しんしんのラーメンマンがフタをこじあけてケースに侵入し、びっくりしたトカゲが外に逃げたのだな」と推理した私は、近所に住む義母に通報。「母さん、トカゲが逃げました!」

 

駆けつけた義母は「こんなもん飼ってるなんて、ご近所さんにバレたらみっともない…!」と血まなこになって捜索、本棚の裏にへばりついているトカゲを発見した。

 

義母「捕まえるよ!」

アル「いや素手はヤバい、噛まれますよ!彼のサバイバルグッズの中に防刃手袋があったはずなので…」

義母「ご近所さんにバレたらみっともない!!」

 

そう叫ぶや否や、素手でパシッとトカゲを捕まえた義母。「さすが戦中生まれ、なんて勇敢なおばあさん!」と感心した私。

見栄は時として人に勇気を与えるらしい。

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