オタクにもリア充にもなれない妻と、闘うオタクの夫/59番目のマリアージュ

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59番目のマリアージュ

 

デビュー作『59番目のプロポーズ』には「オタクとキャリアの恋」というサブタイトルがついているが、当時「アルテイシアもオタクじゃないか」とよく言われた。

たしかに夫と出会ったのは「間違いない、メールだ!」というアムロの着ボイスがキッカケだったし、初対面の夫とガンダムの話で盛り上がった。

とはいえ、私はアニメや漫画にさほど詳しくないし、最近の作品はあまり知らないし、ゲームもほとんどしないし、オタクと呼べる人間ではない。かといってリア充にもなれないという、中途半端な存在なのだ。

若い頃はリア充男性と付き合うことが多かった。
音楽好きの彼氏とフェスやライブに行っては「ノリ方がわからない…早く帰りたい」と思っていたし、彼氏のフットサルの試合を観にいっては「つまらなすぎて拷問だ…早く帰りたい」と思っていた。

ウェイ系の人々の「仲間好き・やたら乾杯して写真を撮りたがる・ハイタッチしたがる・初対面でタメ口&下の名前呼び」といった文化にもなじめなかった。

当時はリア充になれない自分にコンプレックスを抱いていたが、結局、人は自分の居心地のいい場所にいるのが一番なのだろう。

オタクの夫と付き合って、家でひたすら漫画を読んだり、クリスマスにガンダムツリーを飾ったりして「なんて楽ちんなんだ…ワナワナ」と震えた。「ワナワナ」「メメタァ」など、擬音を自由に口に出すこともできた。

もともと私はインドア派なので、女友達とも家でだらだらしゃべることが多い。夫とも家でだらだらしゃべるだけで楽しかったので、デートらしいデートはあまりしなかった。
だが、たまに外でデートするのも楽しかった。行き先がフェスやフットサルじゃないからだ。

記憶に残っているデートは、二人でガンダム展に行った時のこと。
巨大セイラさんの股などじっくり眺めていたら(巨大セイラさんは画像検索すると出てくるが、女型の巨人より恐ろしいと思う)、夫が「ワナワナ」と震えだした。

夫「…間違いない、古谷徹だ!」

なんと、たまたま声優の古谷徹氏が来場していたのだ。
「ぺ、ペガサス流星拳…!」と高ぶる夫を「ここをどこやと思っとる」と制する妻。その後、勇気を出して話しかけて握手もしてもらった。アムロの手はとても暖かかった。

その他で記憶に残っているのは、USJのジュラシックパークのアトラクションに行った時のこと。

「ヴェロキラプトル!」「ブラキオサウルス!」「プシッタコサウルス!」と全ての恐竜の名前を連呼して、「そしてナレーションは江原征士だ!」と結んだ夫は、周りのお客さんに「何者?」という目で見られていた。

アトラクションを出た後、「さすが恐竜オタクだね」と言うと「いや、骨を見せられて『これはアロサウロスの椎骨だ』と言えるぐらいじゃないとオタクじゃない」と返されて「なんと厳しい世界よ…ワナワナ」と震えた。

現在はオタク人口が増えて市民権を得ているが、我々が十代の頃はオタクへの弾圧が厳しかった。

夫は高校時代、クラスの女子に「オタク、キモい!死ね!」とディスられ、みずからの陰毛をちぎって投げつけたそうだ。当時から闘うオタクだったらしい。

また、ストⅡで強くなることに命をかけており「俺はゲーセンで死ぬ」と思っていたのだとか。当時は昇龍拳の出しすぎで、熱い鉄板に触っても平気なぐらい親指の皮が厚くなっていたらしい。

そして、ハタチの頃はUMA好きが高じて『野人発見』というタイトルのム-ビーを撮影した夫。
山奥で男友達と撮影したという作品を、私も観せてもらった。そこには野人役の夫が全裸で木に登ったり砂を食べたりする姿が映っており、言葉を失った。

「全裸で砂を食べる夫は勘弁」と皆さん思うだろうし、私も字ヅラだけ見るとそう思う。
だがリア充にもオタクにもなれない者としては「羨ましい」という憧れもあるのだ。

私はそこまで何かに熱中することができない。三日坊主ならぬ三日大僧正を称するほど飽きっぽい性格で「子どもの頃からずっと好き!」と言えるようなものがない。

だからこそ、幼稚園のアルバムに「将来の夢:きょうりゅうになりたい」と書き、40歳を過ぎて「恐竜に食われて死ぬなら本望だ」と話す夫に憧れる。

私がずっと続けていることといえば、「酒を飲む」「女友達としゃべる」「セレブのゴシップ誌を読む」の3つぐらいだ。ちなみに私がゴシップ誌を読んでいると、夫が「キミの好きなマイリー・サウルスが載ってるね」と恐竜っぽい名前で呼んでいた。

 

私がオタクになれない理由

 

 

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