種族を越えた家族とわくわく動物ランド/59番目のマリアージュ
(我が家のトカゲ)
前回の『夫婦と猫とスピリチュアル事件』に対して、読者の方からこんなツイートをいただいた。
『私は近所の畑に捨てられた子猫を捕獲するため、雑草の中に座って気配を消している時「野グソしてると思われたらどうしよう」と不安でいっぱいだった』
たしかに畑の中で気配を消すのは、野グソをする時か農作物を盗む時ぐらいだろう。
脱糞や窃盗の疑いをかけられても、捨てられた子猫を救おうとする。猫好きとはそういう人種なのだ。
その読者の方いわく『拾った子猫は先住猫(去勢オス)たちのチンチンを常に吸っていて、吸われる方は痛くて辛そうだったので、子猫に「私の乳を吸うか?」と差し出したところ、目もくれませんでした。乳首がチンチンに負けた瞬間でした』とのことだった。
猫のためには乳首も差し出すし、心臓も捧げかねない。猫好きとはそうい(以下略)
うちのラーメンマンも元捨て猫で、里親ボランティアさんの手によって我が家に連れてこられた。事前にメールのやりとりをしている時、私は「民生委員みたいなおばちゃんが連れてくるのかな」と予想していた。
引き渡し当日、近所にお茶菓子を買いに出ていると、夫から「早く帰ってきてくれ、NANAみたいな連中が来たぞ」とメールが入った。
慌てて家に戻ると、ピアスにパンクファッションの男女3人組が、ギターケースではなく猫のケージを抱えていた。
予想外のルックスに度肝を抜かれたが、彼らはとても気の良い人々で「この子は兄弟猫と3匹で捨てられてたんですよ」と説明してくれた。「3匹につけた仮名は、ダンテとネロとルシファーです」とも。
そしてラーメンマン(旧ルシファー)と別れる際は「幸せになるんだよ」と涙ぐんでいて、私も思わずもらい泣きした。
そんなNANA御一行様は、夫の飼ってるトカゲを見て「怖い…」と怯えていた。猫好きだが爬虫類は苦手らしい。
人間界には「猫派VS犬派」の派閥闘争があるが、私は猫も犬も好きだし、動物全般が好きだ。
子どもの頃は近所の犬を飼っている家をめぐるのが日課だった。6歳のある日、通りすがりの犬に尻を噛まれたが、犬への愛は揺らがなかった。
相手が土佐犬だったらトラウマになったかもしれないが、私を噛んだのは小型のマルチーズだったため、ちょっと血が出る程度ですんだ。その時も「私を噛んだことで犬が叱られるのでは」と犬の心配をするほどだった。
無類の動物好きなのは、母が動物嫌いだったため、絶対に飼わせてもらえなかったせいかもしれない。
その積年の恨みからか、我が家は動物のフィギュアやぬいぐるみだらけで、友人からは「わくわく動物ランド」と呼ばれている。
「子ども好きや動物好きをアピールするのは、自分の好感度を上げたいからだ」と言われたりするが、ほとんどの人は本気で好きなのだと思う。
私の60代の叔母は無類の子ども好きで、赤ちゃんを見ると「カワイイ…!!」と瞳孔が開いている。今はボランティアで近所の子ども達を預かっていて、良寛さまのように童らに囲まれている。
私は人間の赤ちゃんを見ると「細部まで精巧にできてるなあ」と感心するが、動物の赤ちゃんを見ると「か…カワイイッ…!!!」と瞳孔が開き、動悸・息切れ・心肺停止などの症状に見舞われる。
前にマンションの玄関で若夫婦とすれ違った時、奥さんは赤ちゃんを抱いて、旦那さんは犬を連れていた。初対面の犬にテンションが上がった私は「柴犬ですか?何歳?へー3歳!男の子?女の子?」と話しかけて、柴犬に「バイバーイ」と手を振って別れた。
その後、赤ちゃんの方を一度も見なかったことに気づいて「感じ悪かったかも」と思った。
このように、動物好きゆえに好感度が下がる場合もある。
夫の母は「アルちゃん…子どもはいてもいいけど、いなくてもいいものよ。お金もかかるしね」と言っていたので、無類の子ども好きというわけではなさそうだ。一方、猫は好きらしく、夫の実家ではつねに猫を飼っていたし、我が家の猫たちも孫のように可愛がっている。
「ばあばがおやつあげよ!」とちゅ~るを与える義母と「お義母さん、おやつをあげすぎるとご飯を食べなくなるので」と嫁姑風の会話を交わしつつ「ペットは家族だなあ」と実感する日々である。
女友達の知り合いがソロモン諸島出身の男性と結婚したのだが、ご夫君は初来日した際、「日本では人間と犬が結婚できるのか?」と斬新な質問をしてきたそうだ。
彼の国では動物は家畜であり、ペットという概念がないらしく、服を着て散歩する犬を見て「これは…夫婦なのか??」と思ったらしい。ソフトバンクのCMも混乱を招いたのかもしれない。
犬猫との婚姻は受理されないものの、日本では「ペットは家族の一員」という意識が強い。私も猫たちを子どものように思っているが、トカゲは正直微妙だ。
トカゲは表情が変わらないし、まばたきすらしない(まぶたがない種類なので)。舌で眼球を舐める仕草を見ると「目が乾燥してるのか、カワイイなあ」とは思うが「我が子よ…」とまで思わないのは、種族が遠すぎるからか。はたまた、私の爬虫類愛がそこまで強くないからか。