「その人は阪急電車に乗ってきたの?」/59番目のマリアージュ

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「それは選択ミスだぞ」

古典落語

 

私が高校生になった頃から、母はどんどん壊れていった。

私が15歳の時、母は今の私と同じ41歳だった。かつての若さと美しさを失い、どう生きていいかわからなかったのだろう。24歳で結婚した母にはキャリアも手に職もなかった。

 

最期に会った時、しわしわのミイラのような母が「誰か男の人を紹介して」とお医者さんにせがんでいた。「男に幸せにしてもらう」という他人頼みな生き方しか選べなかった母。

母のようになりたくなかったから、私は今の夫、今の人生を選ぶことができた。

 

父と母は似た者同士だった。自分が一番大切で、他人を利用することしか考えてない。自分の欲求を満たすのに夢中で、その犠牲になったのが子どもたちだ。

VERY妻のコラムで『自己愛の強すぎる者同士、スペック狙いで結婚した者同士の悲惨な末路』と書いた。

だが今思えば、もともと母は父を好きだったのかもしれない。

 

母からは父の悪口しか聞かなかったので、これは私の想像にすぎないが、母は父のことが好きで結婚したんじゃないか。

 

というのも、私は母から若き日のモテ自慢をよく聞かされた。ありとあらゆる金持ちやエリートに求愛されたという話を聞きながら「こいつ馬鹿じゃねえか」と思っていた。過去の栄光にすがって、夫は家に帰ってこなくて、そんな自分が悲しくないのかと。

 

ちなみに、某有名落語家に口説かれたこともあるらしい。やっぱり美人が好きな男は浮(以下略)

 

「いらっしゃーい!」と受け入れたかどうかは知らないが、若き日の母はかなり遊んでいたらしい。付き合った男たちの中には、優しくて穏やかで、母を一途に愛するお金持ちもいただろう。それでも父と結婚したのは、自分とよく似た、ワガママで自己愛の強い男に惹かれたからかもしれない。

 

「それは選択ミスだぞ」と言いたいが、その選択ミスの結果、私は今この世に存在する。

 

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