「その人は阪急電車に乗ってきたの?」/59番目のマリアージュ

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ネットのある時代に

 

東京カレンダー2018年1月号

私はブランド好きで見栄っ張りでミーハーな母が嫌いだった。他人を見下して悪口を言う母を「いい年して空っぽだな」と冷めた目で見ていた。

でも今となれば、母の気持ちもわかる気がする。

 

母も心の底では「若さと美しさを失った自分は空っぽだ」と気づいていたんじゃないか。そんな自分を肯定するために、他人を否定して攻撃せずにいられなかったんじゃないか。

 

それに時代も大きかったと思う。当時は「男は外で働き、女は家を守る」という性別役割分業意識が今よりも強かった。「男は稼いでナンボ」「浮気は男の甲斐性」という価値観も強かった。父親の多くは家庭に無関心で、ワンオペ育児が当たり前、女性の経済的自立は困難だった。

そんな時代に、母のような女性はいっぱいいたのだろう。

 

もっと遅く生まれていれば、母も違う人生を選べたのかもしれない…と書きつつ、港区妻アカウントとかになってた気もすごくする。

 

それでもネットのある時代に生まれていれば、ツイッターで承認欲求を満たしたり、マウンティングで憂さ晴らししたりして、ガス抜きできたかもしれない。

もしくは「お金はなくても豊かに暮らす」とセレブからロハスに転向できたかもしれない。まあスピ系にドハマりしそうな気もするが。

 

それでもアルコールや自傷にハマり、拒食症の末にガリガリに痩せて死ぬよりはずっとよかった。

なんだかんだいって、私は母に救われてほしかったのだ。母のことは嫌いだったが、あんなふうに死んでほしくなかった。

 

そう思えるのは、母が死んだからだ。

母がこの世から消えたことで、私は本当の意味で解放された。過去の怒りや恨みも薄れて成仏していった。

仏様になった母は二度と私を傷つけないから、生きている母よりも愛せる。8年たった今では、楽しかった記憶や母の良いところも思い出すようになった。

 

母とよく阪急電車に乗って、西宮北口の駅でうどんを食べた。うどんを食べる母の横顔は美しかった。

もし来世があるなら、今度はうどんをいっぱい食べて長生きしてほしいと思う。

 

 

Text/アルテイシア

 

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