夫は私の原稿を読まないし、私は夫の試合を観に行かない/59番目のマリアージュ

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夫の考えたシナリオ

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数年前、乙女ゲーのシナリオを量産している時期があった。
その時は、総理大臣・漫画家・野球選手・考古学者・ヤクザ・SP・海賊・僧侶・武将・忍者…等など、ありとあらゆるキャラのシナリオを書いていた。

私が夫にアドバイスを求めたのは、格闘シーンを執筆する時。とくに攻略キャラがイケメン格闘家のゲームを手がけた際は、試合シーンの下書きを夫にお願いした。

格闘家ルートの場合、大抵はライバルキャラの格闘家(無論イケメン)が登場して「この勝負、勝った方がヒロインをもらう!」的な展開になり、「俺がおまえを守る!」みたいなセリフが頻発する。
また恋人が試合で死ぬのではと不安がるヒロインに「バーカ、俺がおまえを残して死ぬわけないだろ?」とか言って、イチャコラするのが定番だ。
(ちなみに戦にのぞむ戦国武将も「笑止!」ではなく「バーカ」と言う)

して、完成した下書きを読むと「ローミドルと連打で打ち返し、組んでからのヒザ蹴りが炸裂!」などリアルな試合描写が続いたのだが、夫もだんだん筆が乗ってきたのか、キャラのセリフやト書きも書かれていた。

「オレはなあ、親の顔を知らず、誰からも愛されず、施設の暗がりで獣のように育った!
そんな生活がイヤで、光あふれる世界に行きたかった!
そして15で施設を抜け出し、キックの道場に入門したのだ!
オレは強くなりたかった!強くなればすべてが手に入ると思った!
そして道場のコーチに勧められ、単身タイに渡ったのだ!
そしてそのムエタイの聖地で最強になったのだ!
オレはお前とは違う!オレには守るべきものなどない!ただ己の強さあるのみ!お前のようなじゃれあいはオレには必要ない!このまま地獄の超特急だ!死ね!」

「俺がおまえを守る!」とさんざん言ってたキャラが「俺には守るべきものなどない!」。

しかもト書きとして(その姿はまさしく鬼であった…)と書かれており、ライバル格闘家は
「おのれ、うぬがごとき虫けら黄泉に送ってくれるわ!」と違うキャラになってるし、(その刹那、全身が青い炎に包まれ、目に真っ赤な光が宿った)と違うゲームになっている。

その後も「烈!」「砕!」「殲滅!」とセリフか効果音かよくわからない言葉が続き、ラストは「これほどの高ぶりは幾年ぶりであろうか…今宵こそ、死合おうぞ」と結ばれていた。

それを読んだ私は腹を抱えて笑い「傑作だ!ノーベル文学賞だ!」と褒めちぎった。
そして後日、リリースされた作品のキャラのビジュアルを見た夫は「全然強そうじゃない!俺はストⅡの豪鬼をイメージしたのに」とショックを受けていた。まあ乙女ゲーやからな。

ちなみに別のゲームの仕事で、中国武術の達人「チンカイカイ」という敵キャラとの格闘シーンの下書きを頼んだこともある。
その時は下書きの途中からチンカイカイがチンチンカイに変わっていて、腹を抱えて笑った。しかもせっかく考えたチンカイカイという名前はボツになった。まあ乙女ゲーやからな。

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