金額ではなく侘び寂びが大切な「夫婦の買い物」/カレー沢薫

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アップルウォッチまでの道のり

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今年の誕生日、夫は「アップルウオッチが欲しい」と言い出した。

 

夫が何を欲しがろうが、こちとら財布なので関係ない。発言権も人権もない。その昔、夫の誕生日に折りたたみ自転車を買ったが、おそらく10回も乗られていないことに関しても何も言っていない。アップルウオッチが欲しいならそれにすればいいし、買ったウオッチを使わなかろうが局部に巻こうが文句はない。Bluetooth機能で股間からMusicが流れ出しても、こっちは音楽に合わせて立て揺れするだけだ。

 

しかし、問題は「一緒に買いに行くことに意義がある」点だ。

 

当方、auの店員に最寄のアップルストアを聞いたら「隣県です」と言われた田舎住みである。アップルウオッチまでの道程を尋ねたら「まず空港」と言われる恐れがある。

とりあえず、家から一番近いauショップに行ったのだが、当然取扱はなく「ここならあります」と車で1時間弱のショッピングモールを教えられた。

 

思ったよりは近い。しかし、その1、2時間が、全ての仕事をギリギリでやっている私には致命的なのだ。特に休日の時間はでかい。しかし「時間がないからあなただけで買いに行ってくれ」というのは誠意がない。

一緒に買いに行く事に意義がある。夫の腰ぎんちゃくとして同行し、一言も発さず、金を払う。発言するとしたら「50円玉4枚も出してすみません」ぐらいだ。そうする事に意味があるのだ。

 

数年前、夫が車を買い替えた、納車の日「助手席にはじめて乗るのはあなたでなくてはいけない」というようなことを言われ、一緒に行こうと誘われたが、車に興味ゼロの私は、面倒だ、忙しいといって結局納車に1人で行かせた。そのことを今でも少し後悔している。

 

1,2時間がでかい、と言っても、その間本当に仕事をしているのか。3秒に1回エゴサしたり、3分に1回ピクシブで「推しの名前 R-18」で検索している時間をトータルすれば、そのぐらいにはなるだろう。

 

そんな時間を惜しんで、夫の言わば好意であった申し出を拒否したのは申し訳なかったと思っている。

よって、忙しいから、一人で行って自分で自分の誕プレを買えと、数枚の札ビラと4枚以上の50円玉を投げつけるわけにはいかぬのだ。

よって、日曜日、アップルウオッチがあるというショップに片道1時間弱かけて行った。

 

「お取り寄せになります」

 

なかった。

どうせ取り寄せになるなら、家から近いショップでもできたのではないか、それともアップルウオッチというのは、召還すら決められた場所でしかできないのか、お前は英霊なのか。

 

結局、取り寄せに1ヶ月ぐらいかかり、また取りにいかなければならなくなった。

取りに行くのは1人で行ってくれ、喉まででかかった。しかし、それは誠意も詫び寂びもない。

「1ヶ月かけて取り寄せられたアップルウオッチを再び片道1時間かけて一緒にとりに行く事に意義がある」のだ。

 

そして、ショップにつくと、アップルウオッチの説明が始まった。「自分が使うわけでもないアップルウオッチの説明を一緒に聞く」というのも詫び寂びだったのかもしれないが、そこまでは私は寂びが効いてる人間ではないので、その間私は自分の買い物をしに行った。

 

そして戻ってきてやっと、真の意義「支払い」の段がやってきた。

 

「¥50,000

 

高い。

私の宝具レベル5の土方さんですら17万しかしないのに、その3分の1以下もしやがるとはどういう了見だ。

 

結婚、家族を持つと言うのは、そもそも自分の時間や金を他人のために費やすことになるということである。それに対し、ここまでガタガタ言える私は結婚に向いてなかったのかもしれない。

 

 

Text/カレー沢薫

 

 

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