個人の体験がパッケージされて、本になっていくこと/紫原明子×柳下恭平『家族無計画』イベントレポVol.2

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柳下さんと家入さん

 

――「正しい家族」は、もうやめた。

 

結婚、出産、そして離婚。そこに散りばめられた現代女性をとりまくデリケートな問題に切り込み、“家族”という共同体の在りかたを独自の視点で描いた『家族無計画』(朝日出版社)。エッセイスト・紫原明子さん初の著作となる、家族論エッセイだ。
刊行を記念して開催されることになった連続トーク企画『明子の部屋』では、毎回個性豊かなゲストを招き、“家族の在りかた”についてトークを繰り広げていく。
神楽坂にある「カモメブックス」でおこなわれた第1回は、同店の店長で校閲会社「鴎来堂」の代表でもある柳下恭平さんをゲストに迎え、世の中で家族が置かれている状況や、新しい家族のカタチについて、ざっくばらんに語り合った。
終始笑いに包まれた会場の様子をお伝えしたい。

 

人生の物語は、パブリックになったとき本当の終わりを迎える

 

紫原明子さん(以下、明子):『家族無計画』を読んでいただいたとのことで、感想を伺ってもいいですか?

 

柳下恭平さん(以下、柳下):「ズルい」って思いましたね。あとがきにも書いてあるんですけど、ご友人が「卒論」という表現をされたんですよね。
僕の友人で、引っ越しのときに荷物が全部出払ったがらーんとした部屋で、「その部屋での8年間展」として写真展を開いた人がいるんです。ギャラリーとかの個展では、最後にクロージングパーティをすることがあるんですけど、それって節目なんですよね。
友人の写真展も、家っていうプライベートな空間がギャラリーというパブリックな場になって、ホームパーティをすることで「この生活よ、ありがとう」って次にクローズしていく、いい企画だなって思ったんです。

明子さんもこの本で、ご友人が「卒論」と言ったように、生活を1回アーカイブして、結婚生活っていうものにカンマを打ったのかなって。

 

明子:あ~、なるほど。個人の体験とか、本当の物語ってオープンになっていないところにあるじゃないですか。今私の中で続いている物語はこの本の中にはないし、物語はパブリックに開くとき本当に終わるんですね。

 

柳下:僕らは今も続いているけれど、明子さんはもう次を向いている。で、単純に「ズルいな」って(笑)。いい意味ですよ。

 

明子:最近、自分の体験を物語としておもしろく話せるかどうかはすごく大事だなって感じています。作家やアーティストじゃなくても、その人の終わった物語がドラマティックに語られた瞬間にグッと興味を持つというか、この人おもしろいなって思うんですよ。柳下さんとも前にお話しましたけど、みんな物語は持っているんですよね。でもそれを、本とか個展とか、パッケージングできる節目がないから、そのまま埋もれていってしまう。

 

ハイフィディリティ

 

柳下:です、です! 本って正にパッケージングなんですけど、ひとつの時代が1冊になっている感じですよね。『ハイフィディリティ』という、イギリスの小説で映画にもなったんですけど、女性にひどい仕打ちをしてフラれた主人公の男が、自分のダメさを見つけるために、今まで付き合った中で最悪なフラれ方ワースト5の女性に会いに行くっていう話があるんです。このときはこうだったとか、この時代はこうだったとかって、過去の自分にカンマを打ってくるんですよ。そういう情報整理みたいなものが、明子さんはこの本でひとつできたのかなって感じました。

 

明子:私の中では、別居した瞬間とか、離婚した瞬間とか、その折々で整理していたつもりなんです。だけど、私の体験が本になって人の手に渡って、受け取ってくれた人が自分の体験をのせてフィードバックしてくれたときに、私の体験はいい意味で減っていくというか、人によって上書きされていく感じがあったんです。だからね、人に話したほうがいいんですよ、いろんなことを。

 

柳下:そうですよね。ブログとかでもいいですしね。

 

明子:そうですよ! 柳下さんも話したほうがいいと思いますよ、ちゃんと。

 

柳下:あはははは……。

 

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