まさかの浮気疑惑!奥さまは名探偵/旦那さまは貴族(山田ルイ53世)
一月ほど前の話。
妻と娘が、一週間ぶりに帰って来た。
別に、夫婦喧嘩の末、娘を連れて家出していたわけではない。
毎年恒例、お盆の里帰り。
娘を伴い、妻の実家に帰省していただけである。
僕は仕事があったため、一人で留守番。
少し寂しいが、いつものことだ。
「…誰か来たでしょ!?」
帰宅して早々、僕の部屋にやって来た妻が放った一言。
要するに、妻と娘が居ぬ間に、僕が女性を連れ込んだのではないかと疑っている。
突然の浮気容疑…心外である。
勿論、そんなことはしていない。
潔白である。
しかし、彼女には、根拠があるそうな。
「必ず、カギをかけること!!!」
そう書かれた、幅広の黄色いポストイット。
これまで、何度か、窓の施錠をせぬまま外出した前科のある、僕へ向けての妻お手製の注意書きである。
帰省する前に、部屋の窓に貼っておいたはずのそれが見当たらないと怪訝な表情。
女性の来訪に備えて、剥がしたに違いない…それが、彼女の言い分である。
重ねて言うが、僕は潔白。
妻が帰省した翌日の朝。
目覚めた際、窓に貼ってあるポストイットが、大きな蛾に見え肝を冷やした。
毎朝それは御免なので、剥がしただけのこと。
それが真相である。
大体、それなら、未だあちこちに、干しっ放しの妻のパンツの類を、いの一番になんとかするのでは…そう諭す。
彼女もそれほど本気ではなかったのか、ほどなく納得し、部屋を出ていった。
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