「何でも言い合える関係」は理想的?奥さまは一休さん/旦那さまは貴族

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結婚式によく招かれる。

と言っても、華やかな交友関係を自慢したいわけではない。

只の仕事。

“貴族”とか“乾杯”といったキャラクターのおかげか、パーティーや結婚式などおめでたい席に呼んで頂くことが多いのである。

年間何十組ものカップルが、

「ルネッサ―――ンス!!!」

僕達“髭男爵”のギャグを結婚生活のスタート、その号砲として採用してくれているわけだ。

大役だが、光栄である。

 

そんな門出の場で耳にする、新郎新婦の決意表明の定番は、

「何でも言い合える夫婦関係を築いていきます!!」

である。

“何でも言い合える友達のような間柄”……それこそが、万人が目指すべきお洒落な夫婦関係、男と女の正解、いや、もはや正義だと言うのが昨今のトレンドのようだ。

しかし、前向きで清々しい彼らの言葉をBGMに、僕の脳裏を過るのは、それとは程遠い真逆の出来事。

「妻には何も言うまい……いや、言えない!」

そう、心に固く誓った、“あの日”の記憶である。

夫婦と言えども、所詮は他人。

『育ってきた環境が違うから、擦れ違いは否めない』のは、山崎まさよしが、二十年前から口を酸っぱくして説いてきた通りである。

我が家でも御多分に漏れず。

元来、神経質で綺麗好きな僕に対して、妻は非常にザックリとした性格。

いい意味でも悪い意味でも、“テキト―”な部分が目につく。

冷蔵庫一つとってもそう。

妻の認識では、冷蔵庫は食べ物を冷やし保存する道具ではなく、“時を止めるマシーン”である。

勿論、勘違いなのだが、結果、我が家の冷蔵庫からは、賞味期限切れの食べ物や調味料が頻繁に発見される。

あるものはカビが生え、あるものは不気味に液状化し、生前の面影は欠片も無い。

半年前に娘の為に買った、アンパンマンの顔を摸した菓子パンが(そもそも、彼の顔が菓子パンを摸したものなのでややこしいが)、盛大に生えたカビのおかげで、いかつい髭面に変わり果てていた……なんてことも珍しくない。

子供達のヒーローに、“漢(おとこ)”テイストが加わり、もはやエグザイルの新メンバーである。

いかに婦女子の憧れの的とは言え、不意に目に飛び込んで来ると、“ギョッ”として心臓に悪い。

我が家の冷蔵庫は、食品だけではなく、肝まで冷やすと言うわけだ。

そういった“元食べ物”達を、定期的にサルベージし廃棄するのは僕の役回り。

何しろ妻は気付かないし、気付いても動かない。

僕がやらねば、我が家の冷蔵庫は、“風の谷”よろしく腐海(ふかい)の底に沈む運命なのである。

「もったいないなー……」

と胸が痛む。

何より我が家には四歳の小さな娘がいるので、衛生面が心配なのだ。

 

他にも、皿が溶けてしまうのではと不安になるほど、食器を一晩中浸け置きしすぐに洗わないのも気に入らないし、畳んだ洗濯物をタンスに仕舞わず、警察に押収された下着泥棒の戦利品のように、いつまでも床に並べて置きっぱなしにするのも苛々する。

数え上げればキリがないが、家事は基本妻のテリトリー。

僕が安易に踏み込めば、彼女は決まって不機嫌になる。

指摘した後の面倒臭い一悶着に費やす時間や精神力と、問題改善で軽減されるストレス……“コストパフォーマンス”はあまりよくない。

「妻のやることに“なるべく”口出ししない」

僕が、そう心掛けるようになったのも、自然な流れである。

とは言え、さすがに全てをスル―というわけにもいかない。

夏が駄目でも、セロリが好きでも一向に構わないが、我慢出来ないこともあるのだ。

 

 

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