「だって恥ずかしいんだもん」娘の一言に傷ついたひな祭り/山田ルイ53世
先日。
家族で桃の節句をお祝いした。
僕は、男三人兄弟の真ん中で、“ひな祭り”には全く馴染みが無い人生を送ってきたが、娘のお陰で今や恒例行事である。
大体、男子のお祝いである“端午の節句”にも特別な思い入れなど無い人間である。
鯉のぼりや武者人形といったものは、僕の実家には見当たらなかった。
行事ごとに、無頓着な両親だったようである。
僕にとっての“端午の節句”は、芸人を志し上京してからの印象しかない。
当時住んでいた襤褸アパートの近所の銭湯が、“菖蒲湯になる日”……それだけである。
一カ月前には、“節分”もあった。
今年、我が家において、鬼の面を被ったのは娘。
しかも、豆を撒くのも彼女である。
豆の弾丸を一身に浴びる役回りは僕。
思わぬ変則ルールが採用された結果、『鬼が人間を追っかけ回す』という、ただただ救いの無い光景が繰り広げられることとなる。
おまけに、豆を撒く際の娘の掛け声が、
「おにはーそと!ちくわーうち!!」
だった為、我が家の節分は、鬼を家から追い出し、代わりに“練り物”を招き入れる奇祭と化した。
恐らく、地方の小さな漁港あたりで催されているような。
知らんけど。
因みに、娘はちくわに胡瓜を入れたものが好物である。
彼女にとって“福”には違いない。
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