ワードセンスに爆笑!四歳児の意外な願い/山田ルイ53世
帰宅すると、
「今日、○○さんに『ももちゃんパパ(僕のこと)全然見ないね―?』って言われたよ―!?」
との妻の一言。
思わず、冷や汗が噴き出す。
○○さん、つまり妻のママ友に、
「お宅の旦那、全然テレビ出てないねー!?」
と、ディスられたのだと思ったからだ。
“一発屋”の心は、知覚過敏の歯に同じ。
ちょっとしたことでも、沁みる。
褒められた話ではないが、僕は自分が“髭男爵”であることを、娘に隠している。
もっと成長すれば、自ら率先して“一発父”のことを吹聴しようなどとは思わぬだろうが、まだ、世の中の機微を知らぬ四歳児。
うっかり幼稚園の友達や、その親の前で、
「パパが髭男爵なんだよ―!?」
……考えるだけでゾッとする。
要するに、真に隠したい相手は、娘ではなく、その周辺。
幼稚園のママ友連中など、最も知られたくない相手である。
娘が、親の“一発”のせいで、“イジられる”事態だけは避けたいのだ。
(遂にバレたか!クソッ!!)
これまでの苦労が水の泡……と思いきや、僕の早とちり、杞憂であった。
○○さんの、
「全然見ないね―!?」
は、クリスマス会や父親参観等々……幼稚園の行事で、僕の姿を見かけないという意味。
一先ず、ホッとする。
「もっと顔出してよ!」
「娘がカワイソーでしょ!!」
「他のウチは、もっとパパ来てるよ!!」
僕に真っ当な父親を演じさせる為、ママ友の台詞を引き合いに出したようだが、『バレたくない』が理由の欠席は過去に一、二例のみ。
実際は、スケジュールの都合が殆どであり、彼女の非難は当たらない。
所変われば品変わる