高齢者は敬老大喜利の被害者か?賢者にはなれなくても妻がいれば/山田ルイ53世

Pocket

series_03

 

二、三年前。
仕事で訪れた京都。
昼過ぎに到着し新幹線の駅から外に出ると、小雨がぱらつく中タクシー乗り場へと急ぐ。

その日の現場は、京都駅から車で二十分ほど行ったとある工場。
創立○○周年の催しがあり、その宴席で漫才をする余興の仕事である。

辿り着いたタクシー乗り場は……長蛇の列。
さすがは、世界的観光都市、古都京都。
日本人、外国人を問わず移動の足を求める人々でごった返していた。

「本番間に合うかな……」
気は逸るが、致し方ない。
相方とマネージャー、三人で行列の最後尾に並ぶ。

僕達の前には、年配の男女が既に並んでいる。
二人とも六十代後半くらいか。
御夫婦とお見受けした。
大行列にも拘わらず、苛立つ様子もない。
仲睦まじく何やら話し込んでは、頬笑みあっているその様子に、年下の若輩者が言うのも失礼だが、心が和んだ。

一番下の娘が、この春大学を卒業し、三人の子供全てを立派に社会に送り出した。
定年退職まで勤め上げた夫。
それを支えた妻。
久し振りに出来た夫婦水入らずの時間に、
「母さん、京都でも行くか……」
全て僕のベタな妄想だが、いかにもそんな雰囲気。
(自分達夫婦にも、いつか彼らのような時間が訪れるのかなー……)
東京に残した妻子に想いを馳せ感慨に浸れば、僕のささくれ立った心も次第に落ち着きを取り戻す。
人生の大先輩である見知らぬ老夫婦の背中に、何か大切なことを教わった気がした。

僕達の後ろに並んだ、外国人男性二人が、
「オー!ヤミ―!!」
などと言いながら、ホットドッグ感覚で豚まんを食べている。
関西では有名なとある店の豚まん。
確かに超“ヤミ―”。
かくいう僕も大好物だが、公衆の面前で食べるには少々香り高過ぎる代物。
(……こんな所で食うなよ!!)
最初は腹を立てていたが、件の老夫婦の御利益か。
場末の立ち飲み屋程度だった僕の心のキャパも、今や市民会館の大ホールにまで拡張済み。
(彼らは外国からのお客様……我々とは感覚も違うのだ)
もはや、悟りの境地。
すんでのところで、おもてなしの心を取り戻した。

その時、
「おーい!○○さーん!こっちでーすよ―!!」
眼前の仏……もとい、老夫婦の旦那の方が、後方、つまり僕の方を振り向き、手招きしている。
一瞬、
(ん?俺に手を振っているのか?老眼が進み過ぎて、顔から離さないと新聞が読めないのと類似の現象!?)
くだらない考えが頭を過るが、勿論違う。
その視線は僕を通り越し、遥か後方へと向けられていた。
見れば、年配の男性が一人、小走りで此方へと駆け寄ってくる。

ほどなく合流した男性は、
「いやー、すいません!」
ペコペコと夫婦に対して頭を下げている。

漏れ聴こえる三人の会話から推し量れば、どうやらその老人、集合場所を間違えて京都駅周辺を彷徨っていたらしい。
男二人に女一人。
果たして、自分が彼らの年齢になった時、まるで青春ドラマに出てくるようなメンバー構成で京都旅行を楽しめるだけの仲間が持てているだろうか……自信がない。
(素晴らしいなー!!よくよく考えれば、俺の人間関係って仕事の付き合いしか……)
僕に普段の人付合いを省みる暇も与えず、
「探した―!ここにいたんだ―!!」
今度は女性が合流。
勿論、年配……おばあちゃんである。
先程の男性の奥方だろう。
老夫婦二組のダブルデートだった模様。
今から訪れる名所名跡、お食事処の話題ではしゃぐ眼前の仲良し四人組に、
(修学旅行の中学生みたいにはしゃいじゃって……まあまあ、年取ってもこういう感じは楽しいもんなのかなー……)
老後に希望が持てるではないか。
繰り返すが、素晴らしい。

 

Pocket

運営会社    お問い合わせ    利用規約    プライバシーポリシー    TOFUFUについて
© TOFUFU