人のことは言えない…「子どもを印籠扱いする親たち」/山田ルイ53世

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同じことをしている自分

先日、家族三人で寿司屋に行った際。

カウンター席に、妻、娘、僕の順番で腰掛ける。

「すいませーん!」

注文が決まったのだろう。

ネタケースの向こうで待ち構える職人に、妻が声をかけた。

「えーと、いくらとうにとー……」

回る店でこそないが、お値段はリーズナブル。

一向に構わないが、少々品の無い妻の頼み方に辟易する。

「へい!いくらとうにですね!!」

威勢よく妻の注文を繰り返した老職人は、続けて娘の方を向き直り、

「おじょうちゃんは何にするかなー?」

どうやら、子供好きなようだ。

しかし、娘は恥ずかしがって何も言えない。

家や幼稚園では、手に負えないほど活発だが、知らない人の前ではもじもじとしてしまう。

典型的な内弁慶と言うやつ。

見かねて、

「ももちゃん、何食べたいの?」

僕が助け船を出すと、消え入るような声で、

「……なっとまきー……」

彼女は、“納豆巻き”が好きである。

そんな娘に、

「パパに言ってもしょうがないよー?」

「そんな声じゃ、お店の人に聞こえないよ?」

「ほらー、何食べたいの?ちゃんと自分で言いなさい!!」

「なっとまきください―って!ほらー!!」

件の“ママ達”と同じことをしている自分に気付き、ゾッとする。

客は、僕達だけではない。

他にも早く注文したい方々がいるだろう。

(うわー、みっともないなー……)

反省し、老職人の方をソッと伺うと、相変わらず穏やかな表情。

しかし、ネタケースのガラス越しに見えた彼の指先は、まるで“シューティングゲームのラスボス戦真っ只中”のように、まな板を連打していた。

人のことは言えない。

Text/山田ルイ53世(髭男爵)

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