肝に銘じておきたい「子供は親の魚拓」/山田ルイ53世

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series_03
先日。

とある地方営業でのこと。

現場は、“近隣で一番”といった風情の立派なホテル、その大広間。

ディナーショー形式の催しで、三十脚近くの円卓が配された会場は家族連れで賑わっていた。

そこで漫才を披露し、お客様の思い出に一笑い添えるのが僕達の役回りである。

 

「いやいやいやー……どーも―!!」

舞台に飛び出すと、

「わ――――!!!」

巨大な母船から無数の小型宇宙船が吐き出される様に、会場中の円卓から小さな黒い影が射出され僕達の方へと駆け寄って来る。

子供達だ。

三歳から五歳位だろうか。

映画、『インディペンデンス・デイ』さながらのスペクタクルな光景に少々怯むが、

「ルネッサーンス!!」

お決まりのフレーズを叫び、我が身を奮い立たせ、戦いの狼煙を上げた。

 

別に、髭男爵の人気未だ健在……と言うわけでもない。

そもそも、彼らの世代は、一発屋である我々のことなど知らぬ。

しかし、そこは“コスプレキャラ芸人”の強み。

自分で言うのも口幅ったいが、シルクハットに貴族風衣装という“ピエロ感”溢れる風体が、

「何か、楽しいことをする人達に違いない!!」

子供達のワクワクを掻き立てて止まないようである。

 

僕が、愚にもつかない分析をしている間にも、彼らの侵攻は着々と進み、気が付けば舞台の前面(まえっつら)には子供達がビッシリと“集り(たかり)”、かぶりつき状態。

高さ五十㌢程しかないステージをバーカウンター代わりに、手を置くわ肘をつくわ……仕舞いには、

「ねーねーこれ見て―!!」

持参したリカちゃん人形を誇らしげに掲げ、見て欲しいとねだる女の子や、

「おじさんー、これどうやんのー?」

ブロックの様な玩具を僕の足元に広げ、その組み立て方を尋ねてくる男の子まで現れる始末。

 

何より参ったのは、

「バンバンバンバン!!」

御利益があると誰かに吹き込まれでもしたのか、僕の履いている皮靴を叩く行為に子供達が精を出し始めたことである。

逐一、

「わ―!やられた―!!」

などとリアクションを取ってやれば、

「キャキャキャキャキャキャ!!」

腹が捩れんばかりに笑い転げてくれるので至極“簡単”ではあるのだが、何分、僕の体重は百三十キロ。

ウッカリ踏みつけでもすれば大惨事……気が気ではない。

トラブルを避ける為、父兄の協力が欲しい所だが、皆素知らぬ顔。

中には、

「すいません……」

暴徒化した自分の子供を抱え、申し訳なさそうに席に連れ戻す者も幾人かいたが、大半の親達は、牧歌的な風景でも眺めているかのように、微笑を湛え席から動く様子など微塵もない。

(やり切るしかない……)

心を凍らせ、暴れまわる子達を捌き、笑いに変えつつ漫才を進める。

自画自賛ではあるが、悪環境の割には場を盛り上げ十二分に使命を果たしたはずである。

 

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