早期教育に懐疑的な親の財布すらゆるめる「知育玩具」購入の記録/山田ルイ53世

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「自由に触れて遊んで欲しい!」

 

さて、自宅から車で小一時間ほどの、とあるデパートに到着した山田家御一行。

件の玩具は外国製で、しかも、正規品を取り扱う店が非常に少なく、調べたところそこが一番近かったためである。

 

お目当ての店に辿り着く。

僕の経験上、知育玩具と名の付くものは、味気ないサッパリとした外見……スタイリッシュな木彫りの民芸品のようなものが少なくないが、その店の製品は、子供の興味を引く楽しさと大人が満足出来るオシャレさが良い塩梅で同居しており、なかなかのクオリティーである。

店同様、客もセンスが良い。

くど過ぎないペアルックに身を包んだ若い夫婦が数組、店内を闊歩している。

 

思い思いに玩具を手に取り遊んでいるのは、彼らの子供達であろう。

 

「自由に触れて遊んで欲しい!」

というのが店のコンセプト。

要するに、“タダ”で玩具を使用出来る。

僕などは、無料のものを思う存分……というのは、気が引けるタイプの人間だが、今やそういう時代でも無いらしい。

皆、ザ・満喫……遠慮などは一切ない。

見守る親の方も、

「ほら!見るだけだよ!」

「ちょっと、今日は買わないよ!」

そんな無粋な事を言う素振りは微塵もない。

総じて、振る舞いが堂々としており、スマートである。

羨ましい限りだ。

 

「○○ちゃん、凄いね―!」

声に振り向けば、ブロックか何かで“大きなお城”を完成させた女の子と、それを讃め称える若い父親の姿が目に入った。

その作品の巨大さは、もはや、子供の遊びの範疇を越え、“ゼネコン”レベル。

あくまで、僕の目算だが、“工期”は一時間ほどだろうか。

(よくもまあ、“タダ”でそこまで……)

まるで、『胸にナプキン、手にはナイフとフォークで、スーパーの試食のウインナーに舌鼓を打つ』かのような所業。

正直、厚かましく感じるのは否めない。

大体、“無料”や“タダ”を満喫出来る人間は、モノを買わないのでは……そんな疑問が頭に浮かぶ。

事実、“お城の親子”は、満足したのか何も買わずに帰って行った。

僕はと言えば、娘所望の品を見つけ手に取るとレジに一直線、サッサと会計を済ませ、

「ほら、ももちゃん、行くよ!」

妻と娘を急かし、帰路につく。

 

前述の通り、品物それ自体は、良い買い物をしたと満足している。

何も問題はない……二、三回遊んだきり、娘が“それ”に興味を失ったこと以外は。

 

Text/山田ルイ53世

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