娘のプール教室を混乱におとしいれた「チャイルドプレイ」事件/山田ルイ53世

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子供が真似する「チャイルドプレイ」

 

自分の順番を待つ間中、"ピーン!"と立てた人差し指を口の中に突っ込み、前歯→奥歯→前歯→反対側の奥歯……と延々と歯磨きをしている。

しかも、その勢いが猛烈で、

「いや、ウンコでも食ったんかい!」

とツッコみたくなるほど。

更に、"指歯磨き"を終えるや否や、両手で目の前のプールの水をすくい上げ、

「ズ、ズズゥゥゥ―――!」

限界まで口に含むと、

「ピュー―――!!!」

ケルヒャー顔負けの高圧放水を開始。

それをまともに顔面に浴びキャッキャと逃げ惑う子、自分も口に水を含み報復に出る子と、ちょっとしたパニックが出現した。

当の本人は、水を全て吐き出し終わると、再び指を"ピーン"……また歯磨き。

結局、このルーティンは、暫くの間繰り返される。

 

見るに見かねたコーチが、女児に向かって何か言っている。

勿論、分厚いガラスに阻まれ一切聴こえぬが、

「○○ちゃん!汚いからやめなさい!」

と注意するコーチに、

「アイムチャァァァァァァキィィィィィー―!」

と叫ぶ女の子……そんなやり取りを妄想し、僕は思わず吹き出しそうになった。

それはどうやら、周りの父兄も同様で、

(クククク……)

みるみる充満していく"必死で我慢する気配"で、バルコニーのガラスに亀裂が入りそうである。

「アハハ……うちの子もちょっと前まで"あれ"やってたー!」

遂に飛び出したそんな声に、

「もうー、恥ずかしいなー……」

気まずそうにしている女性が、"チャキママ"であろう。

 

練習を終え、着替えを済ませた娘と、ロビーで落ち合う。

その傍らには、件の女児が。

訊けば、他の習い事でもご一緒する、顔見知りだそうな。

「ももちゃん、バイバーイ!」

「○○ちゃんまたねー!!」

挨拶を交わす様子には、もはや"チャキ子"の面影は微塵も無い。

僕は少しガッカリした。

 

帰宅後、娘と一緒に風呂に入る。

僕が頭を洗っていると、

「クスクスクス……」

小さな笑い声がし、次の瞬間、頬に"生温い圧"を感じた。

そっと目を開け、浴槽の方を見る。

そこには、口一杯に含んだ風呂の湯を、父の顔めがけて放出する娘の姿があった。

「やめなさい!」

一応叱るが、別にいい。

子供はすぐに真似をし、なんでも楽しい遊び……"チャイルドプレイ"に変えてしまうものである。

 

Text/山田ルイ53世

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