すべての人が“入らない”人生を生きている――話題の本の著者・こだまさんに聞く

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ある主婦の半生を綴った私小説が、発売後またたく間に大反響を呼んでいる。

タイトルは『夫のちんぽが入らない』。そのインパクトから“下ネタおもしろエッセイ”のような内容を予想した人は、大きく裏切られることになるだろう。

しかし、読んだ人はみな、胸を締め付けるようなこれ以上ないタイトルであることを思い知ることになる。

そんな稀有な読書体験をさせてくれる本書について、著者こだま氏のインタビューとともに紹介したい。

 

降り積もる雪のように世界の風景を変えてしまう私小説

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まるで北国にしんしんと降り積もる雪のような本である。

彼女の人生には、天気のように予測不可能なできごとが次々と降りかかる。

それを綴る彼女の筆致は、白く清らかな淡雪のようにシンプルで、その言葉のひとつひとつは手に乗せれば消えてしまうほどに繊細だが、それでいて肌に冷たくジン、と沁み入る。

そして、読み終わるといつの間にか辺り一面を真っ白に覆っていて、見慣れた風景を一変させてしまう。しかし、その雪の中は案外暖かかったりもするのだ。

 

雪に閉ざされた寒村に生まれ育ったこだま氏は、「過干渉でヒステリックな母親、そして集落の閉鎖的な人間関係」(本書P.10より)から逃れるために大学へ進学する。しがらみだらけのコミュニティになじめず、母親に容姿や性格を罵られながら怯えて過ごす環境には、共感する読者も多いだろう。

 

こだま「もともと人と話すのが苦手で、周りに気を遣いすぎて疲れてしまうタイプでした。そんな自分のことが嫌いでしたが、地元は知っている者どうしばかりの土地。大学進学を機に家を出て、まっさらな状態からスタートできるのが嬉しかった。自分でも変わるきっかけが欲しかったんでしょうね」

 

 

初めて気疲れせずに一緒にいられた夫との出会い

そんな彼女が引っ越した初日に出会ったのが、同じ下宿先に住む青年だった。初対面のこだま氏の部屋にずかずかと上がり込み、勝手にくつろぎはじめたその男性こそ、のちにこだま氏の夫となる人物だ。人見知りの彼女が、なぜ彼のことは嫌だと感じなかったのだろう。

 

こだま「私から誰かに話しかけることがないので、相手も遠慮して話しかけてこないことが多かったのですが、彼はお構いなしに私に関わってきた。今までそんな風に接してくれた人はいなかったんです。ちょうど自分が変わりたいと思っていたタイミングで、何の先入観もなく踏み込んできてくれたから、かえってよかったんだと思います」

 

人の目をまったく気にせず、我が道を行く彼は、一見こだま氏とは正反対のタイプ。だが、馬鹿正直で他人に頓着しない彼だけが、彼女をまっすぐに受けとめてくれた存在であることは、本書を読めばしみじみと伝わってくる。

 

こだま「それまでは、他人と同じ家に住んだらきっと疲れ果ててしまい、自分には結婚なんて無理だと思っていました。それ以前に、気兼ねなく話せる相手が自分にできるとも思えなかった。でも、彼が人に気を遣っているところを見たことがなくて(笑)。ああ、こういう人との関わり方もあるんだなと教えてもらったんです」

 

しかし、そんな2人の間に立ちはだかるのが、本書のタイトルにもなっている“ちんぽが入らない”という問題だった。身体的か、精神的か、どちらの理由もあるのだろうと彼女は語るが、本当の原因は今もよくわからない。

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