結婚指輪と婚約指輪を盗まれて1年が経った話/元鈴木さん
この先も生きていていいかもと思えたプロポーズ
ゴリラと付き合って2年目の、私の誕生日だった。
オクトーバーフェストの帰りに見に行き、付き合うことになったお台場の浜辺に私達はいた。
キラキラ光る指輪を出して、ゴリラは私に「結婚しよう」と言った。
なぜ海なんか見たいのかと不思議に思ったくらい、横殴りの雨風の中でのプロポーズだった。
非常に寒かったのをよく覚えている。
今思い出しても笑ってしまうが、その時はとても嬉しくて、一瞬暴風雨が世界から消えてしまったようだった。
2年間とても幸せだった。
彼は、私が喉から手が出るほど欲しかった、絶対的な愛をくれた。
いつでも私の味方で、私のどんなところも愛してくれた。
駄々をこねる子供のような私を、大きな懐で迎えてくれた。
それまで生きてきて誰からももらえなかった愛情を、彼が全て与えてくれた。
私は人生で初めて満たされていた。
「この人とならもしかして、ひとりで死ななくて良くて、この先もずっと幸せに生きていてもいいのかもしれない」
となんとなく思っていたことが、指輪を見た瞬間、確信に変わった。
まるでケースに入った私の命が、キラキラと輝いているように思えた。
私は「はい」と言った。