フリーターなのに石油王と結婚すると思っていたバカかりし頃の話/元鈴木さん
出会うのは自分の程度に合った人間
芸能人もどきでフーターズガール。
うら若きの私の肩書きである。
「控えおろう!このお方をどなたと心得る!恐れ多くも芸能人もどきのフーターズガール様であらせられるぞ!さあ、そなたを食わせたもう!!」
と、まるでご老公の印籠のように振りかざしては、私は好みの「スタ丼が餌です」みたいな顔したジャガイモ系男子を滞りなくかっさらっていた。
筋肉のおどり食いに失敗したことはなかったので、全人類にこの印籠と私の可愛さは万能だと勘違いしていたのだ。
しかし、現実は残酷だ。
ロイヤルファミリーにも、ジョージクルーニーにも、会えた試しがなかった。
ちなみに現在も会えていない。
芸能人もどきのフーターズ印籠でくぐれる門は、せいぜい当時の六本木ヒルズのはしゃいだ成金の集まり程度なのだ。
赤坂御苑の遊園会や、お城の舞踏会には絶対に呼ばれないのである。
一度くらい、やんごとない方々の前で、ショートパンツとタンクトップで飛び跳ねてみたかったものだ…。
そして何より、私が目的もなく時間を消費するように生きていたことが1番の原因だった。
芸能はやる気がなかったし、フーターズガールはただのバイトだ。
世の中には、確かに石油王もロイヤルファミリーもジョージクルーニーもいるけれど、まともに生きていない女が出会える人間のレベルには限界があったということなのだ。
そもそも、成金の値踏みするような視線が嫌だと書いたが、よくよく考えれば、私も彼らの値踏みしていたことは事実だ。
自分が値踏みをしているのに、他人からされないなんてことは無い。
あれはつまり、そもそも値踏みをし合う会だったのだ。
人生は少女漫画やハーレクイン小説のようにはいかないのだ。
平凡な女が奇跡のようにどこかの国の王族に見出されはしない。
怪しいお金持ちはレースクイーンや自称モデルと遊ぶために西麻布のタワマンでパーティーをするし、
春の遊園会で天皇陛下に御挨拶できる品の良い人々は、西麻布や六本木の有象無象が集まるパーティーにはいないのだ。
私は東京に来て、身の丈というものを知ったのだった。