お互いに理想のタイプではない相手と結婚した話/ティナ助

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趣味がピタッとあった当時の彼氏

 

90年代からゼロ年代にかけて青春時代を過ごしてしまった私は、サブカル崇拝、アイデンティティの可視化に躍起になって、同年代の99%がそうだったように、いわゆる「こじらせ」という病にかかっていました。

どんなカルチャーにどれほど精通しているか、知識だけじゃなく実際に足を運んだり交流を持ったりしてハマッているか、そういうポイントを必死で貯めて、それが「イケてる」ことだと思っていました。

 

私が生まれた年には、もうすでにかまやつひろしが『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』という曲の中で「人は何かいい趣味を見つけて、それにハマってないとダメ、夢中になれるものがないなんてダサいし不幸」みたいなことを言っており、我々は悲しくもそういう「呪い」をかけられた世代なのかもしれません。

 

20代の私は当時のトレンドだったミッドセンチュリーの家具集めにハマり、少ないお給料をつぎ込んでいました。付き合う男の子たちも、何か似たような趣味や知識を持つめんどくせえタイプ(今思うと)。「知らない」ということはとても恥ずかしく、「知ってるし、もう持ってる、なんなら俺が作ってる」という態度が魅力的に見えていました。

 

20代後半に3年間同棲して結婚するものと思っていた彼氏とは、インテリアや映画、音楽の趣味がピッタリと合って、部屋の中も好きなもので着々と整えていましたが、ことあるごとにマウンティングされたり私が合わせないとキレられたりして、生活はストレスいっぱいでした。

30歳目前にしてその彼が20歳そこそこの専門学校生に心変わりして、私は住んでいた家を追い出されたのですが、そのとき、私が買い揃えた家具や照明のほとんどを彼が手元に残したがって別れ話が揉めに揉め、最終的には精神的に疲弊した私が負けた形になり、ほとんど手ブラで放り出されました。おそらく、私がいないときに連れ込んでいた新しい若い彼女に、この家具は自分の趣味だと自慢してたんでしょう。

 

ねぇ、ムッシュかまやつ、私、好きなもので身の回りを固めたけど、不幸だったよ・・・。

 

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Charles & Ray Eames: 1907-1978, 1912-1988: Pioneers of Mid-century Modernism (Basic Art)

 

 

 

その後も恋愛で色々と痛い目にあいながらも、なんとか仕事では編集者として独立することができ、「一人で楽しく暮らしていこう」と腹を括った頃、もともと顔見知りだった今の夫からアプローチを受けてお付き合いをすることになったのですが、とにかく彼がすべてのことに「知らない」と言うので驚きました。ビートルズを知らない、イームズを知らない、バンクシーを知らない。私は、とうとうこんなタイプと付き合うまでになったか、と震えたのですが、私がずっと欲しくて買えなかったコルビュジェのソファの画像を見せたとき、「カッコいいね! 今度一緒に買おう」とニコニコする彼を見て、私の中の何かがパチーッと弾け、打ち上げ花火のように高いところで爆発し、体が軽くなったのを感じました。

 

二人で割り勘で買ったレザーのソファは、13年近く私と犬と子供が一日中ゴロゴロしているせいでもうボロボロ。そろそろ買い換えようか〜、と促す私に、まだいけるでしょ、まだまだ〜、と流す夫。相性バッチリ、理想のタイプ、とは思わないけど、「嫌だ」って思う要素が見当たらないから、この幸せはまだまだ続くと確信しています。そうだね、まだいけるっしょ。

 

Text/ティナ助

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